今回は、設計を考える上でたびたびテーマになる「シェア空間」について書いてみたいと思います。
シェアオフィスやラーニングコモンズなどを例に、シェアのあり方を整理しながら、
実際の設計にどう活かしていくかを考えています。
多様な使い方を受け止める「機能」
シェア空間には、ひとつの目的に特化した空間とは違い、さまざまな使い方を前提とした機能性が求められます。
主に求められる機能例:
-
多様な利用目的への対応
グループ利用、個別利用、発表や展示など -
気分を切り替える居場所
飲食コーナーやブックコーナーなど、ゆるやかな時間を過ごせる場 -
情報の共有
情報通信端末やライブラリ機能 -
管理のための場
スタッフの居場所やバックヤードなど、運営側のためのスペース
これらを前提にしつつ、何より大切なのは、
人と人とのコミュニケーションを自然に生み出すことです。
空間として大切にしたいこと
機能に加えて、私がシェア空間の設計で重視している要素があります。
-
自然とのつながり
光や風、植物などを取り入れることで、心地よさが生まれます。 -
可変性・可動性・選択性
シーンに応じて使い方を変えられることは、シェア空間の基本です。 -
象徴的な“特別な場所”の存在
空間に記憶や印象を残す、シンボリックな要素があることで、人は自然と集まります。

シェア空間のシーン整理(スケッチより)
簡単なスケッチをもとに、空間の中で想定される具体的な使われ方をいくつか挙げてみます。
-
スタンディング
入口近くでのちょっとした会話や、立って作業することで気分転換に。 -
ミーティング
グループディスカッションに適した距離感(900mm前後)でのテーブル配置。 -
集中
パーソナルスペースをしっかり確保(隣との距離1200mm以上)した個人席。 -
シェアライブラリ
書籍や情報端末を通じて、人と人をゆるやかにつなぐマグネットスペース。 -
展示ウォール
壁いっぱいに広がるホワイトボードやスクリーンで、日常的な情報共有や発表に。 -
展示レール
日常展示からイベントまで対応できる、可変性のある展示装置。
「人が集まりたくなる」ための設計へ
最終的には、その場所の特性を読み解き、これらのシーンをどう組み合わせて配置するかがポイントになります。
ただ機能を満たすだけでなく、
“自然に関わりたくなる空気”をどう設計に取り込むか。
それが、コミュニケーションを誘発する空間をつくるための鍵だと感じています。