











三角州開拓により発展した地域の風土

ボリュームによる明快な形

シンプルなテナント構成


倉敷中島計画 96bldg.
倉敷市中島地区に建つテナントビルの計画である。中島地区は、三角州を開拓して発展してきた地域であり、敷地周辺は国道やロードサイド店舗といった人工的な風景が目立つ。一方で低層の建物や田畑も多く、目線を2階にあげれば山まで続く都市風景が見通せる。施主は地元の工務店であり、サイディング等の標準的な建材を使うことが希望の条件であった。敷地は国道から車でのアクセスとなるため、駐車場を30台確保すること、建築自体が国道からのアイコンになることが期待された。建築のボリュームを積層した明快な形によって、大きなスケールの国道と対峙し、与条件を解決することを考えた。
駐車場を手前にまとめることで、建築の周囲は視界の抜けを確保できる。オープンなエリアに明快なボリュームを立ち上げ、国道から視認しやすい外観をつくることを考えた。ボリュームは3層で、少しズラして積む形とした。ズレの部分が特徴的な外観をつくるとともに、各テナントのバルコニーとなって、テナントと都市をつなぐ場所となる。出来上がってみると、建築全体はどこか人工地盤に浮かぶ船のように見えた。甲板としてのバルコニーに立てば、都市を一望することができる。ボリュームは層ごとに色を変え、層状のつくりを強調することで、国道の伸びゆく形とバランスをとっている。内部空間は7つのテナントを計画し、水平連続窓によって景色を切り取った。構造は木造であり、木造で可能な範囲のはねだしを採用している。目にとまりやすい凹凸のあるシルエットを形成しながら、平面をシンプルな形とすることでローコストを実現した。中島地区の日常と共にあり、ささやかながらもこの地の営みに接続する建築を目指した。