












01. 三角州開発の歴史

02. 明快なボリューム

03. 平面構成図


倉敷中島計画 96bldg.
倉敷市中島地区に建つテナントビルの計画である。施主は地元の工務店であり、施主が自社で施工することから、木造で標準的な建材を用いることが前提条件であった。また、敷地は国道2号線に面しており、駐車場を30台前後確保することに加え、建築自体が国道からのアイコンとなることも期待された。敷地のある中島地区は、かつて東西に分岐していた高梁川による三角州を干拓し発展してきた地域である。周辺環境は車社会で交通インフラを中心とした人工的な風景が目立つが、三角州開発を重ねた人々の営みの延長としての雄大な都市の姿としても捉えられる。低層の建物や田畑も多く、ゆったりとした時間が流れていると感じた。今回の計画はそのような都市の魅力を取り入れたいと考え、地層のように受け継がれた人工地盤の上に、更に3層のボリュームをズラして積層させる形とした。駐車場はファサード側にまとめることにより、建築エリアの周囲は広々とした視界の抜けを確保できる。そこに立ち上がった明快なボリュームが国道から視認しやすい外観をつくり、ズレの部分が各テナントの外部空間となって、テナントと都市をつなぐ場所となる。さながら船の甲板のようにそこに立てば、遠くの山まで続く都市の風景を眺めることができる。3層のボリュームは層ごとにそれぞれ異なる仕上げとして変化をつけ、層状の構成を強調する外観とした。内部空間は7つのテナントを計画し、細長い水平連続窓によって光の変化をつけながら景色を切り取っている。一般的な木造でも可能な形態操作で、サイディングやアルミサッシといったローコスト建材のみを用いて特徴ある外観を形成し、シンプルな平面計画とすることでテナント面積の合理化も行っている。中島地区の日常と共にあり、ささやかながらもこの地の営みに接続する建築を目指した。