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01. 既存ビル+個室群+待合

02. 平面構成図

03. スイミー
堺スイミー総合クリニック
内科・外科・美容を行うクリニック、堺スイミー総合クリニックの計画である。敷地は大阪にあるビルの2階のテナント区画である。プロジェクトのはじめに院長からクリニック名の説明があり、『スイミー』(レオ・レオニ作)という絵本がその名前の由来であると聞いた。この絵本は小学校の教科書にも掲載されており、大人になってあらためて読み返してみると、物語に込められた哲学は本質的であらゆる分野に通じるものである。クリニックを機能的に設計しながら、絵本の哲学を建築的に応用し、その魅力を取り入れたクリニックを設計しようと考えた。クリニックは医療施設として極めて機能的であると同時に、利用者が落ち着ける居場所であるという両側面を解決しなければならない。そんな2面性について考えていた時にこの物語が繋がったのである。『スイミー』は1匹の個性のある小さな魚が世界を変えていく物語である。主人公のスイミーは自分だけが仲間と異なる体色をした魚で、それゆえに仲間と合体して魚群になったときに「ぼくが、目になろう。」と特別な力を発揮する。そこに着想を得て、クリニックの空間全体を構成するときに、1つの個性的な異分子を挿入することを考えた。全体と1つの個性によって、その対比や役割の違いが生まれ、極めて機能的なゆえに画一的になりがちなクリニックの内部に変化をもたらすことができる。挿入した部分が中心となり、利用者とクリニックのつながりを生む場所になると考えた。具体的には、白い個室群で構成したクリニック全体の中に、他とは異なる性質を持った待合空間を挿入したのである。待合空間は暖かいベージュ色で凹凸が多い形状であり、全体の中でコントラストを生みながら安らぎや落ち着きをつくりだす。利用者もスタッフも使いやすい動線計画を練り、その動線計画を支える背骨となる位置に待合空間を配置した。個室群と待合のそれぞれが、均質と個性、清潔感と親近感、合理性と物語性といった相反する特性を持ちながら活かしあっている状態を目指した。待合空間は座ったり、本を置いたり、出入口になっていたりと利用のシーンに合わせた拠り所となっている。クリニックとしての最新の機能性を備えながら、1つの効果的なデザインを行うことで空間が動き出し、物語のように広がりを持った建築になったのではないかと考えている。