









既存ビル + 医療諸室 + 待合

平面構成図

絵本「スイミー」
堺スイミー総合クリニック
大阪にあるビル内に開業した「堺スイミー総合クリニック」の計画である。内科、外科、美容医療といった複数の診療科目があり、限られた区画に多数の医療諸室を機能的に納めることが求められた。同時に、地域の利用者が落ち着ける居場所であって欲しい。機能性と親しみのある居場所の両側面を解決しながら、このクリニックの個性に昇華したいと考えた。クリニック名の由来は絵本の『スイミー』(レオ・レオニ作)である。絵本の哲学はあらゆる分野に通じるものであり、空間にも展開できる。物語を空間へ翻訳することはおもしろい試みで、親しみのある居場所のヒントになると考えた。
『スイミー』は1匹の小さな魚の物語である。仲間の魚は赤い色をしているが、スイミーだけが黒い色をしている。「全体と1つの異分子」というあり方が物語の本質だ。クリニックの空間にも、スイミーのような1つの異分子をつくった。具体的には、クリニックの白い空間のなかに、他と異なる個性を持った待合空間を挿入するデザインを行った。待合空間は暖かいベージュ色で凹凸のある形をしていて、白い空間とコントラストを生みながら、安らぎや落ち着きをつくりだす。利用者もスタッフも使いやすい動線計画を練り、動線を支える背骨となる位置に待合空間を配置した。白い全体と待合空間が、清潔感と親近感、合理性と物語性、といった相反する役割を持って活かしあう。待合空間は、座ったり、本を置いたり、入口になっていたりと利用のシーンに合わせた結節点となっている。クリニックとしての最新の機能性を備えながら、1つの効果的なデザインを行うことで空間に変化が生まれ、物語のような親しみのある建築になることを目指した。
設計:CORRED DESIGN OFFICE / 北村拓也
施工:株式会社ヤマゲン工務店
所在地:大阪府
主要用途:診療所
構造:既存ビルの改修
規模:190㎡
竣工:2023年
写真:髙橋菜生