「極大化」からはじまる建築の発想
「極大化する」という考え方があります。身の回りにあるごく当たり前のものを、極端に大きくして考えてみる。すると、普段は意識していなかった役割や本質が、別の輪郭をもって立ち上がってきます。
たとえば、イス。一般的には横幅40cmほどの大きさですが、これを3m、10m、100mと伸ばしていったらどうなるでしょうか。3mになれば、もはやイスというよりベンチです。ここで初めて、イスとベンチの違いが大きさによって決まっていることに気づきます。10mになれば、公園の遊具のような存在になるかもしれません。座るという行為を超えた使われ方が、自然と想像されていきます。100mともなれば、都市の中に置かれる構造物のような存在です。端と端が離れていても、同じイスに腰掛けているという感覚が、見えないつながりを生み出すかもしれません。
こうして極大化していくことで、イスという存在は、単なる家具ではなく、人や関係をつくる装置として見えてきます。上の写真は、私たちが設計した住宅の一例です。この計画では、イスを極大化するという発想を空間づくりに取り入れています。極大化という思考は、既成概念を軽やかに外してくれます。次はテーブルを極大化したらどうなるか、ベッドを極大化したらどうなるか。そう考えていくと、空間はもっと自由で、想像力に開かれたものであっていいと思えてきます。極大化の発想は可能性に気づくための、ひとつの思考の入口なのだと思います。
