
窓辺という居場所|境界と出会いから生まれる空間の豊かさ
窓は、建築においてとても大切な部位です。
柱や壁といった構造体が「境界」をつくり、内と外、部屋と部屋、世界と世界を分けるとき——
窓は、その境界に“出会い”をもたらす存在になります。
境界だけでは空間は閉じられ、互いに関係性を持ちません。
けれど、窓がそこにあることで、ふたつの世界が出会い、つながり合うことができます。
そこに、視線の抜けや光の移ろい、風の流れといった、関係性から生まれる空間の豊かさが育まれていきます。
窓は太陽と出会う場所
窓は、単に開閉するための部材ではありません。
光や風、太陽と出会う場所でもあります。
光を取り込むことで、空間は明るくなるだけでなく、温熱環境が快適に保たれ、
何より、人の心をやわらかくしてくれるという力があります。
「窓は部屋になることを望んでいる」
──これは建築家ルイス・カーンの言葉です。
窓は単体ではなく、その周囲まで含めて“居場所”として広がっていく。
日本の住宅における「縁側」は、その好例と言えるでしょう。
古民家再生に見る、窓辺のふるまい
上の写真は、私たちが設計を手がけた古民家再生プロジェクトのひとつです。
既存のかたちや素材を活かしながら、周囲の自然と人の暮らしがつながる空間を目指しました。
この計画では、風景・庭・窓辺・生活空間をゆるやかに連続させるようにデザインしています。
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窓越しに景色を眺める
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風を感じる
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緑を背に腰かける
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日の光の中でくつろぐ
そんな窓辺でのふるまいが、自然と豊かな時間へとつながっていく。
「ただの開口部」としての窓ではなく、**居場所としての“窓辺”**が空間に奥行きをもたらしてくれます。
窓をどうつくるか、窓のまわりにどんな行為が生まれるか。
そこには建築の本質的な問いが込められているように思います。
“窓辺から始まる設計”という視点で、また新しい空間の可能性を考えていきたいと思います。