House H
窓辺の家
本計画は、滋賀県高島市の豊かな自然や地域の風景と共にある居場所をコンセプトにしています。空き家となっていた古民家を改修し、季節ごとに別荘や民泊として使い分けて運営・活用していくものです。
高島市に残る民家建築は、木造で中央に合掌を持ち、周囲に下屋がまわるという共通の家の形式を持っています。かつての豪雪に備えるための形ですが、近年では積雪量も減り、家に求められるニーズが変わってきました。
本計画では、これまで閉ざされがちであった「下屋」の部分に着目し、下屋を風景に向けて開き、窓辺の居場所として家と自然との関係を再編しました。下屋をかつての雪対策の「囲い」から、緑を感じながら過ごすことができる「居場所」へ。窓辺は白く染めたタモ材を用いて、風景と広間を緩やかにつなぎ、石庭のように柔らかい光を奥まで導きます。伝統的な家の形式を生かしながら、現代的な過ごし方に応答することを考えました。
広間は昔からの田の字プランの和室でしたが、フラットな床で一体化し、建具や雑壁を取り払ってオープンにつなぎました。別荘や民泊といった多様な使われ方にフィットするように、可動の間仕切りで場をつくる方法としています。自由に動く建具サイズの間仕切りは、地元大工と協力して製作しました。内部に収納機能を持たせて、既存の収納不足を解決しています。また、この方法であれば、古民家特有の既存枠の”歪み”に影響されることなく、柔軟な間仕切りが可能です。
建物の長寿命化への取り組みとして、柱や床、基礎の補強を行いました。同時に冬の快適な生活のため、床の断熱性能を向上し、床暖房設備の導入も行なっています。風景を眺める開口は、積雪量に応じた腰壁を設けており、冬は雪景色が広がります。高島市は人口減少と高齢化が進んでいるため、空き家を活用する取り組みは地域再生にも繋がります。伝統的な建物を現代的な要素でアップデートすることで、地域の魅力を再発見できるような、これからも魅力を重ねていけるような場所を目指しました。