Clinic H
内科クリニックのインテリアデザインである。
内科としてはコンパクトな22坪のテナントであったため、院内に回遊性を持たせて、診療の流れを最適化することから始めた。待合から診察室を効率よく繋げつつ、患者と医師それぞれの動線をスムーズに計画している。結果として、診察室を中心とした入れ子の形に落ち着いた。
漠然としたテナント区画に場をつくるため、入れ子は小屋をたてるように、75角のヒノキのフレームで構成した。フレームに絡みつくように、面材や家具、カーテンを配置していく。入れ子によって分節された各エリアは、独立性を保ちながら相互に接続し、面積以上の広がりがある。
仕上は温かみを感じられるシナ材をベースとし、部分的に半透明のポリカーボネート板をはめて柔らかい自然光を導いた。自然光を取り入れた設計は患者にとって心理的に良い影響を与えるだけでなく、医師やスタッフがより心地よく過ごすことができる。また、カーテンや家具はフレームに留めるつくりを採用することで、移動や撤去、増設を簡単に行うことができる。現在、クリニックは午前は外来診療、午後は訪問診療という形式をとっているが、将来的に運営方針が変わった際にも柔軟に対応できる。
インテリアにおいて長期的な運営を視野に入れると、今後の軸となる部分と変えやすい部分とを階層化して、明確にすることが有効であるように思う。フレームを拠り所としながら、これからのクリニックとともに育っていくような空間のあり方を目指した。
設計:CORRED DESIGN OFFICE / 北村拓也
施工:ヤマゲン工務店
所在地:大阪府
主要用途:内科クリニック
規模:既存建物内の内装改修
テナント床面積:66㎡
竣工:2024年
写真:新山源一郎