
小屋への感動を設計へ落とし込む
私の建築的感動のストックのひとつに「小屋」がある。
写真は、兵庫県の山あいを旅していて出会った風景。ぽつんと一軒、田園に溶け込んでいた。
以前から小屋には関心があり、建築家・中村好文さんの著書を何度も読み返してきた。
そこにある「住まいの原型は小屋」という言葉や、最小限の豊かさ、ワンルームの構成などの視点は、
読み返すたびに新しい輪郭が少しずつ見えてくる気がする。
谷川俊太郎 × 中里和人の写真絵本『こやたちのひとりごと』では、小屋が風景と関係を結ぶ存在として描かれる。“小屋の人格性”を感じさせ、しなやかな意志のようなものがそこには宿っている。
そこで今回は、小屋的発想を設計に活かすための視点を整理してみたい。
小屋的発想を設計に活かす視点
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スケールと空間構成
・ワンルーム的で多用途に使えるシンプルな器
・軒下や半屋外空間を作業・保管スペースとして活用 -
素材と経年変化
・木・板金・左官など素朴な素材
・風雨や日射で変化する質感を前提に
・補修・増改築が容易な構成 -
風景との関係
・切妻屋根や単純なボリュームで背景になじませる
・周囲の植生や土色に近い色合いを選ぶ
・風を通しつつ、外より少し守られる開口部 -
自立性と最小限の豊かさ
・電気・水道に頼らないオフグリッド対応
・小さな空間に多様な居場所を仕込む
・住まい・仕事・保管など用途の重なりを許容
一言で小屋といっても、思い浮かべる姿は多種多様だ。
地域ごとの暮らしを映し出し、風景と結ばれた小屋。
さらに遡れば、ロージエの「原初の小屋」にまでつながる、建築的感動の原点なのかもしれない。