日本の浴室は、体を洗い温めるだけの場所ではなく、その時代ごとの暮らしや価値観が自然と映し出されてきた空間でもあります。温泉に身を委ねる原初的な入浴から、仏教とともに広がった「清め」の考え方、寺院の施浴や銭湯に見られる人とのつながり、そして家庭の中で静かに過ごす個人的な時間へと、浴室の役割は少しずつ形を変えてきました。近代以降は衛生や機能性が重視され、現在では癒しや非日常感、バリアフリーへの配慮など、多様な意味を持つ空間になっています。こうして振り返ってみると、浴室はいつの時代も、人の身体と暮らしがそっと重なる場所であり続けてきたように思います。これからの浴室は、設備としての機能だけでなく、日々の疲れをほどき、静かに自分と向き合える時間を支える場所であってほしい。ときには人と人との関係をやわらかくつなぐ、そんな余白を持った空間として、丁寧に考えていきたいと感じています。
