倉敷中島計画
96bldg.
倉敷市中島地区に建つテナントビルの計画である。
敷地は地域の交通の要となっている国道2号線沿いに位置し、国道から敷地までの見通しが良い。そのため、建築自体がアイコン的な役割を果たすことが施主からの希望であった。そこで、建築のボリュームによる明快な形態操作を行い、大きなスケールの国道への外観をつくりつつ、同時に内部テナントと外部環境との関係性をつくり出すことを考えた。建主は木造を得意とする地元の工務店であり、構造は木造としている。
駐車場を前面に配置することで、建築の周囲に広がりを確保できる。そうしてできたオープンスペースに、いわゆるパソコンの「エンターキー」形状の平面をしたボリュームを3層積みあげた。シンプルな操作でありながら大小のズレが生まれて、いろいろなバルコニーができあがる。中島地区はかつての三角州を開拓して発展してきた歴史がある。出来上がってみると建築の全体像はどこか人工地盤に浮かぶ船のように見え、ズレによってできた甲板に立てば国道の先に広がる山まで一望することができる。
内部空間は7つのテナント区画のそれぞれに、バルコニーが必ず1つ以上あるように計画している。周辺との関係が希薄になりがちなテナントビルにおいて、内外の関係を築くきっかけの場所となっている。すでに入居が決まった区画でC工事が進んでいるところを目にしたが、バルコニーを活かした心地よいオフィスができていた。