
都市はインフラ、建物、生活用品というように人工物が重なってできている。都市を構成するひとつひとつの要素は、すべて人が設計したもので、人が思い描いた通りの形をしている。しかし、要素が重なりあうことで、誰も予想しなかった出来事が起こる。重なりあいで予定調和が崩れて、意外性や面白さが生まれる。都市が持つ「生きることに必要なものが、重なりあって生まれる魅力」はそのまま建築に応用できる。
写真は「高架」に「店舗」が重なった風景である。高架のコンクリートに店舗が密着している。都市スケールの高架から建物スケールの店舗へと段階的に変化している。重なりあうと異なるスケールのものが共存することが可能だ。高架下の道路もおもしろい。高架が道路の上を覆っているように見えるが、道路が貫通して穴を開けたようにも見える。強弱関係は50対50である。高架からはね出して設置された鉄のデッキも目にとまる。デッキは高架がなければ成立しない弱い存在であるが、はね出すことで高架から逸脱した領域を持っている。重なりかたの多様性がある。
変わるものと変わらないもの、大きなスケールと小さなスケール、人のためのものと車や鉄道のためのもの、重なりあいの中に差異がある。自らをつくるルールがそれぞれにある。都市のように「複数のルールが並走する建築のつくり方」はできないか。重なりあうことで、空間と機能のギャップが生まれて、予想外のふるまいへとつながる。重なりかたの多様性が、時代を反映している。