『How Buildings Learn』を読む #1


最近、Stewart Brand の『How Buildings Learn』を読み始めた。日本語訳がなく、英語と翻訳技術を駆使してゆっくり読み進めている。この本は、建築が「完成したあとにどう変わっていくのか」を扱っている。いま自分が考えている建築とも重なっていて、引っかかる部分が多い。

このシリーズでは、『How Buildings Learn』を全3回に分けて、印象に残った内容を少しずつ取り出しながら、自分の考えと重ねて整理していきたい。今回はその#1として、冒頭の「COVER STORY」を取り上げる。

COVER STORY 要約


ニューオーリンズのセント・チャールズ通りに、1850年頃、隣り合って建てられた2棟のタウンハウスがある。2棟はほぼ同じ設計で、レンガを露出させた外観と、玄関上部のデンティル・コーニス(歯状に並んだ装飾)が特徴だった。1857年の水彩画に描かれた姿は、控えめながら整った、よく似た建物として並んでいる。

しかし、その後の150年の中で、2棟は少しずつ違う姿になっていく。建設後まもなく、両方に鋳鉄のバルコニーが付け加えられる。けれどその先の更新の仕方は分かれていく。一方は比較すると大きくは変わらずに保たれ、もう一方は屋根裏の増築や側面の拡張、1階の張り出しなど、いくつもの方向に手が加えられていく。外壁はスタッコで覆われ、用途も変わり、理髪店として使われるようにもなる。シャッターや照明、手すりなどの細部も、時間とともに更新されていく。

こうして、同じ設計から始まった2棟は、それぞれ違う履歴をもつ建築になっていく。その中で、ひとつだけ繰り返し残り続けている要素がある。最初に設けられたデンティル・コーニスである。

このエピソードから見えてくること


バルコニーが付け加えられ、増築が重なり、外壁は塗り替えられ、用途も変わっていく。それぞれの更新は異なるタイミングで起こり、揃うことはない。同じ設計から始まっても、同じ建築にはならないのが面白いと思う。

また、更新が重なっていく中でも、なぜか残り続けるものがある。この話では、デンティル・コーニスがそれにあたる。建物の構造体のような強い要素とは別に、主要な機能を持たない小さな装飾が、更新のたびに引き継がれている。すべてが入れ替わっていくように見えても、建築の中には、繰り返し立ち戻られる単位のようなものがあるのではないかと思う。

ここから考えたいのは、建築をひとつのまとまりとして捉えるのではなく、時間ごとのまとまりとして読み取ることだ。構造、外皮、設備、内部といった要素は、それぞれ異なる時間の単位を持っている。それらは、ただ分けるだけでも、単純に揃えるだけでもなく、関係づけられていく中で、部分的に共通項を持ちながら、なお分かれている状態を保つ。その関係の組み方によって、更新は「断絶」ではなく、「重なり」として現れてくる。

自分が取り組んでいる「重なりの家」も、新築でありながら同じ考え方に立っている。コンクリートと木という異なる素材が、それぞれ固有の時間の単位を持っていることを前提に、独立したまとまりとして構成し、それらが重なっていく状態をつくっている。

建築は、完成した瞬間に決まるものではなく、異なる時間をもったまとまりが関係し続ける中で、少しずつかたちになっていく。そのとき設計は、統一することでも分断することでもなく、関係のあり方をつくる行為に近づいていくように思う。

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