素材の倉庫を歩く


2026年7月3日。
大工の三浦と建築家の北村が、「素材の倉庫」に集まり、そこに保管されている木材を見ながら話をしました。

 

ここにあるのは、大工の三浦が魅力を感じ、「残しておきたい」と集めてきた材料です。材木市場で出会ったもの、廃業した材木屋から引き上げたもの、解体現場から救い出されたもの。出どころはさまざまですが、どれも三浦の目に留まり、倉庫に残されてきた素材たちです。

 

この記事は、倉庫を歩きながら交わした対話の記録です。ラワン、タモ、赤松、ヒノキ、ヒバ、サワラ、敷居・鴨居材、赤杉の天井板。ひとつずつ素材を見ながら、その来歴や使い方、これからの可能性について話しました。大工の目と建築家の目を行き来しながら、素材の見方や、これからの使い方について考えていきます。

<話し手>

 

三浦

大工。材木市場や解体現場、廃業した材木屋などから、気になる木材を集め、倉庫に保管している。

 

北村

建築家。CORREDとOKAAAを共同主宰。倉庫に眠る素材に可能性を感じ、建築やアートなど、さまざまなかたちで素材の次のあり方を探っている。


北村

改めて、「素材の倉庫」にある材料をみたいと思っていて。

この材はなぜ選んだのか。元々は何だったのかなど。

分からないところが多いから、少し深掘りしたい。

まず、一番よく使う材料って、この辺?

 

三浦

ここかな。

このあたりが好みの材料で、一番取りやすいところに立てかけてある。

 

北村

この辺でいうと、これはラワン?

 

三浦

ラワンやな。ラワンが好きで、集めてる。

北村

結構前から集めてたよね。

 

三浦

ラワンは昔よく使われてたけど、今は昔ほど出回っていないし、建築でも使われることが減ってきていて。

ベニヤは流通してるけど、これは無垢のラワンやね。

 

北村

樹種としてラワンを見つけたら集めてる、ということね。

これは材木市場で仕入れるもの?

 

三浦

市場で買ってるものもあれば、廃業した材木屋さんに置いてあったものを引き上げてきたものもある。

あとは解体現場とか。30年、40年くらい前の住宅で棚板として使われていたものを、解体の時に引き上げてきたものもあるな。

 

北村

棚板っぽいサイズもあるけど、結構大きいものもあるよね。

 

三浦

ここに立てかけてるものは、基本4メートルくらい。

幅の広いもの、細いものはあるけど、だいたいそれくらいの長さがある。

 

北村

ここでいうと、どこまでがラワン?

 

三浦

この3列くらいがラワンかな。

ちょっと分かりにくいけど、ここより右はタモ材。

 

北村

ほんまや。

ラワンがあって、右にタモがまとまってるんやね。近くで見たいな。

三浦

この辺がタモ。

 

北村

めちゃ綺麗な木目やね。

 

三浦

タモは節もなくて、化粧の枠材とかに使える。

あとは2枚、3枚を継いで1枚にして、カウンターにしたりとか。

 

北村

ちょっと話変わるけど、これもすごいね。

この丸太は?

 

三浦

それは赤松の変木丸太やな。

北村

これは何に使う材料なん?

 

三浦

実際に使ったのは、これより上についてた松葉の方。

松の葉っぱを使う用途があって、その葉を切り落とされて残ってた枝の部分を、面白そうやなと思って引き上げてきた。

 

北村

なるほど、松葉を使った残りか。

 

三浦

そう。

松葉の方は、京都の南座で年末に毎年ある顔見世興行に使われてる。歌舞伎の一大イベントやね。

 

北村

そうなんや。

それを聞くと、さらに興味深いね。

実際に使われている松葉は表舞台に出ていて、これはその残余というか。

 

三浦

そうそう。

 

北村

この枝が集中している形が面白いね。

 

三浦

これを集めてるのは、だいぶ変わり者やと思うけどな。

 

北村

でも、めっちゃ面白いと思う。

帽子掛けとかに使えそうやね。

 

三浦

何に使うかと言われると難しいけど、節の分かれ方がかなり可愛い。

宇宙人っぽいというか。

 

北村

あと、松の皮の肌感もいいね。

 

三浦

そう。

皮のテクスチャー感がいい。

 

しかも、あんまりボロボロ落ちないタイプの皮やね。

手で触ったら落ちるけど、見て楽しむ分にはいい。

お茶室とか数寄屋でも、こういう赤松の皮付き丸太は好んで使われてるよね。

 

北村

面白いな。

気になるものがいっぱいある。

北村

次にタモの横に行くと、これは何?

 

三浦

ここからは、よく使われる杉、ヒノキ。

板物もあれば、太いものは柱とか梁とかに使える。

 

北村

柱っぽいサイズのやつがあるね。

太いな。

 

三浦

梁やから、ちょっと太い。

5寸、7寸くらいあるんちゃうかな。

 

北村

ヒノキの柾目?

 

三浦

そう。柾目やね。

板目みたいには木目がはっきりしてない。

 

この幅で柾目を取ろうと思ったら、実際の木はかなり大きい。

たぶんこの板の3倍くらいの大きさはあると思う。

 

北村

大木から取り出したものなんやね。

あまり主張しないけど綺麗。品のある木目やね。

 

三浦

そういう材料が、俺の好みやから。

その横はヒバやな。

 

北村

ヒバもあるんや。

樹種ごとに置いてる感じなんやね。

 

三浦

そうやな。

この辺の一寸×四寸くらいのやつは青森ヒバ。

日本三大美林のひとつやね。

 

北村

これは市場で見つけるの?

 

三浦

これは市場で買ったやつ。

こっちは米ヒバ。日本のヒバじゃなくて、海外のヒバやね。

 

北村

米ヒバの方が、建材ではよく聞く気がするな。

青森ヒバはやっぱり高級材料なんやね。

 

三浦

国産の材料やからな。

 

北村

木目が薄いというか、細いね。

 

三浦

これでも、このサイズではかなり出てる方やと思う。

あまり反ってないし、強い材料やな。

北村

ここからは?

 

三浦

これは、俺が大好きなサワラの木。

サワラの5メートルの柾目。

 

北村

これは綺麗やな。

 

三浦

天井とかにこのまま貼ったら、スカッとして綺麗やと思う。

めちゃくちゃ品がある。

 

北村

落ち着いた木目で、少しだけ赤いというか。

この隣もすごい。面皮付きのサワラがある。

 

三浦

全部ついてるな。

製材の過程で面皮が残ってるんやけど、これを残したまま使うとなると、かなり珍しい使い方になる。

 

北村

確かに良いね。

このまま使うとなると、ちょっと形を考えないといけないね。

 

三浦

実際は面皮を落として直角にして、建具を作ったり、枠や框にしたりすることが多いかな。

 

北村

しかし、サワラは結構な数があるね。

 

三浦

これは山で買ったから、70枚くらいある。

結構いろいろ作れると思う。

 

節がないやつを選べば、床材にもなるんちゃうかな。

色味も綺麗やし、軽いし、加工もしやすい。

針葉樹で、杉に近いと思う。

 

北村

写真も撮っておこう。

三浦

奥に行きますか。

 

北村

これはすごいわ。

撮りながらは無理かもしれん。だいぶ通路が狭くなってきた。

 

三浦

これはサビ丸太やね。

 

北村

サビ丸太もかっこいいね。

 

三浦

隣は、現場で出た端材。

こういうのは見切りに使えるからストックしてる。

ちょっとした寸法が欲しい時もあるし、戸当たりにも使える。

 

北村

端材のストックがあるわけやね。

 

三浦

捨てるのがもったいないなと思って。

 

北村

樹種はまちまち?

 

三浦

まちまちやな。

北村

この裏に眠ってるやつ、すごいな。

 

三浦

これは確実ではないけど、ニヤトウっていう木らしい。

 

北村

かなり特徴的な木目やね。

 

三浦

ラワンに近いかなと思って買ったんやけど、実際にはすごい木目をしてる。

北村

かっこいいな。

 

三浦

長いことストックされてると、ホコリをかぶって汚れてるように見えるんやけど、削ったら綺麗な木目が出てくる。
そこが無垢材のいいところやね。

北村

この辺は?

 

三浦

この列はナラ材やな。

 

北村

ここでナラが出てくるんや。

 

三浦

ナラはよく聞くと思う。

フローリングとかに使われる。

 

ただ、ちょっと硬いし、よく暴れるから、俺はあまり使う頻度は多くないかな。

 

北村

タモの方が多い?

 

三浦

タモの方が多いな。

三浦

ここから上は、もうちょっと樹種がいろいろあるんやけど、30年とか40年くらい前の家でよくあった敷居・鴨居の材料やね。南洋材系。

 

北村

敷居・鴨居の材料か。

 

三浦

2寸とか1寸5分とかの厚みで、幅が4寸くらいある。

溝をつけて、敷居とか鴨居にする。

堅木やから、引き戸が引かれても、足で踏んでも、なかなかへこみにくい丈夫な木やね。

 

北村

これは、敷居・鴨居にするために買ったわけではないんやね。

 

三浦

これは、宇治の廃業した材木屋さんから引き上げてきたもの。

 

北村

敷居・鴨居として使われるはずだったけど、そのまま保管されていたということか。

 

三浦

そうやな。

出番がなくなった。

現代の住宅では、ほとんど敷居・鴨居を使わないから、余ってたものやね。

 

北村

硬さを活かした使い方ができると良いよね。

 

三浦

そうやな。

半分に引き割って、違う用途として使うこともできる。

壁に貼ったり、天井に貼ったり、床に貼ったりもできるし。

北村

一旦、この並びは見られたかな。

改めて見ると、だいぶ深いね。

 

三浦

俺の中では、だいたいどこに何があるか分かってる。

 

北村

仕事の依頼があった時に、「あの材料を使おうかな」と思ったら、奥から引っ張り出してくる感じ?

 

三浦

そんな感じやね。

あの時のあれが使えそうやな、とか。

このお客さんやったら、この現場やったら、この樹種が合うかな、みたいな。

 

北村

めっちゃいいな。

また今後の計画にも入れたいな。

北村

材木市場についても聞かせてもらえる?

 

三浦

市場には、全国各地の材木屋さんが出品してる。

新しい木を買って製品にして出しているものもあれば、持っていたストックを、自分のところではもうさばけないから出しておこう、というものもある。

 

そういう形で、欲しい人に行き渡っていく。

 

北村

市場の人も、そういう材料の由来は話してくれるん?

 

三浦

そうやな。

あと、たとえばラワンを大量に買い続けてると、「そんなにラワンばっかり買って何に使うねん」と言われたりする。

 

北村

市場の中でも、「あいつはラワンを買うやつや」みたいになるんやね。

 

三浦

あるある。

 

北村

それは、みんなで共有しておきたい情報やもんね。

特定の樹種ばかり買ってる人がいるとか、柾目ばっかり買ってる人がいるとか。

 

三浦

材木屋さんによっても、取引してる業者さんがいろいろやから。

工務店に卸してる人もいれば、家具屋さんによく卸してる人もいるし、木工屋さんもいる。

 

そういう売り手、買い手の属性によって、材料の流れができてる。

 

北村

なるほど。

売り手は、それに合わせて優先的に仕入れたりするわけやね。

 

三浦

そうやな。

北村

解体現場から来るものは、どうやって知るん?

解体した後に、「誰か使えませんか」と声がかかることもある?

 

三浦

そういう時もあるし、自分が大工工事の依頼で現調に行った時に、解体する前の状態を見て、「これ良さそうやな」と思ったら、元請さんとか解体屋さんに話す。

 

どうせ捨てるなら、ちょっと綺麗な状態でバラして、とか。

それこそ、その時だけ自分がバラしに行くこともある。

 

北村

大工工事として現地調査に入るタイミングが、ちょうど良いんやね。

 

三浦

仲間内でやってると、解体屋さんが「これ、いいかなと思って取っておいたわ」と言ってくれることもある。

その辺は連携やね。

北村

一枚板の横が最後ですか。

 

三浦

この辺は、集成材とかベニヤの端材がある。

実務的にパッと使える材がありつつ、この裏には無垢材もある。

 

北村

裏の方には、分厚いのがあるね。

樹種は分かるもの?

 

三浦

これはスケアリーアッシュ。

アッシュやから、海外のタモかな。

オークがナラで、アッシュがタモやね。

 

北村

結構分厚いね。

厚み60ミリくらいある。

 

三浦

これはケンポナシっていう樹種。

ケヤキの代わりみたいなものらしい。

 

その隣は、昔使われてた赤杉の天井板やね。

 

北村

むちゃむちゃいいな。

木目がかなり細かい。絵画みたい。

北村

薄いね。6ミリくらいかな。

 

三浦

天井板やから、かなり薄い。

これは、うづくり加工されてる板やね。

 

北村

うわ、これすごいな。

ボコボコしてる。うづくり加工もできるんや。

 

三浦

できるけど、これは俺がしたんじゃないと思う。

こんなに綺麗にはいかないと思うから、もともとうづくりの板やったんちゃうかな。

 

だいぶ昔のものやから、そもそも痩せてきたのかもしれない。

 

北村

地形みたいに見える。

光の当たり方によって、表情がかなり変わるね。

 

三浦

いいよね。

 

北村

次の足場丸太の実験の時に、これが乗ってても面白いかもしれない。

一枚だけこれが乗ってるだけでも、だいぶ良さそう。

 

三浦

うんうん。

 

北村

この辺り、全部うづくりなんやね。

しかも、中杢が入ってるところがある。

 

三浦

こういうのが、和室の天井に使うやつやね。

高級な方やと思う。

 

北村

最近の建材は、中杢のプリントばっかりやもんね。

 

三浦

そうやな。

 

北村

でも、やっぱり本物の素材は違うね。

木目もかっこいいし、荒々しい表情もいい。

北村

うづくりの板、写真撮らせてもらおう。

すごいから、記録に残しておきたい。

 

これ、継いであるのか継いでないのか分からないね。

中杢が2つあるみたいに見える。

 

三浦

継いでないと思うな。

この薄さで継げへんやろ。

 

北村

まったく継いだ感じがないし、完全な一枚に見える。

中杢が2列あって不思議な木やね。

北村

これで倉庫一周いけたね。

だいぶ秘蔵の木材たちを見られたね。

 

三浦

まだ2階にもあるけど、2階は今説明したものの2メートルものとか、あふれた分が上に行ってる感じやね。

 

北村

短いものまで含めたら、把握しきれへんし、常に変わっていくもんね。

使ったらなくなるし、材料置き場が空いたら、また何かしら見つけて保存していく。

 

三浦

そうやね。

先月も市場に行ったから、また増えるんやけど。

ちょっと集めすぎて手狭になってきてる感じはある。

 

北村

上にある柱みたいなものは?

 

三浦

あれは全部端材やね。

 

北村

柱の端材も、これだけあったら一つの場になるね。

いろんな高さや長さがあって。

ショップとかで、この上にディスプレイしても良さそう。

 

三浦

奥には古建具もある。

北村

奥にちらっと見えてる黒いやつは?

 

三浦

あれは解体現場から出てきたもの。

煤がかぶってる。

 

北村

むっちゃ古材やな。

岩みたい。

 

三浦

古材でいうと、ここに大引きがあるわ。

床組みに使われてたもの。

雨に濡れたから、だいぶ白くなってる。

 

北村

枯れた色でいいね。
時間の蓄積を感じるわ。

おわりに

 

今回は、「素材の倉庫」に保管されている木材を見ながら、その来歴や使い方について話しました。

 

素材がどこから来たのかを知るだけでも、木材の見え方は少し変わってきます。

ここにある木材が、これからどのような可能性をひらいていくのか。

その過程も含めて、少しずつ記録していきたいと思います。

Contact

メール  office@corred.info

電話   080-5303-2051

Office

大阪市中央区船場中央1-3-2-101
大阪デザインセンター内
CORRED

Area

大阪を拠点に

全国で設計を行なっています